既にご存知な方も多いですが、ESGは単なるレピュテーションや社会貢献といった次元を超えて企業の全ての事業のビジネスリスクとビジネスチャンスとなっています。
ある意味では既存の事業判断と変わらない位置づけとなってきたと言えると思います。企業が当たり前の様にマーケティングを行ったり取引先の信用調査を行ってきたことと同じです。環境や社会へのインパクトについては顧客の嗜好や投資家の感度が変わってきてますので、企業が対応できなければ単にガイドラインなどのルール違反をしたというだけではなく、資金調達ができない、物が売れないという理由で市場から淘汰されることになると思います。
プロジェクトや事業単位ではそこそこ前から環境や社会面での精査は相応に意識的に行われてきたと思います。但し、ESGではそれらの個々の事業やプロジェクトのみならず調達元や下請け先も含めて企業のサプライチェーン全体のガバナンスが問われていますが、これは事後的に場当たり的に対応をしようとしても情報が不足していたり直接的にコントロールが効かない点がネックになります。したがってビジネスを企画・立案する時点で情報提供やモニタリングの方法、違反時の対応などについて契約として取り決めをしておく必要があると思います。まずは情報を得られるようにしておくのがガバナンスの一つでしょう。
一番ネックになってくるのはリスクの見方が変わってくることです。これまでは自分が取引をしている相手だけを見ていれば良く、その後ろに誰が何をやっているのかは直接的には関係の無いという考え方が主流だったと思います。これからはその後ろの後ろも含めてサプライチェーン全体の環境、社会面のインパクトを見ていくことが必要となります(細かいガイドラインは別として)。また、自らの事業が与える影響に加えて気候変動が企業に与える影響の分析も開示が求めらています。
また金融の世界では、事業リスクで融資をするストラクチャードファイナンスではリスクは事業単位で切り離して「リングフェンス」することが鉄則です。ただ、サプライチェーン全体のリスクをとるとなると、これまでの様に契約などにより財務リスクが切り離されていたとしても、事業者としては(環境や社会のリスクの様な)切り離すことのできないリスクがあるということをより強く認識する必要があります。
また、最近注目しているのは特に金融の分野でESGが業界独自の自主的なルールから中銀や証券取引所などの関与が強まってきたことです。欧州では既に中銀が気候変動によるストレステストをする動きが昨年からありますが、FRBも追随する動きがあるのでグローバルな動きになってきています。 ストレステストは究極的には金融機関の自己資本の多寡の判定につながってきます。またSECも情報開示基準への関与を始めています。
ルールやリスクのある所にビジネスチャンスがあることも確かですので、キャリアを考える際にも念頭に置いた方が良いと思っています。そういう意味ではESGに積極的に取り組んでいる国や企業や組織はビジネスチャンスもつかみに行っているということが言えると思います。
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