近年、衛星画像が一般人でも入手できるようになって色々な用途が出てきている。中にはSentinelの様に無料のものもあれば解析度の高いものも出てきている。Sentinelの場合だと10日毎に画像が更新されている。この衛星画像のいわば「民主化」は国際協力やファイナンスの世界にもすでに影響を与え始めている。
大手金融機関が最近公表したサービスではほぼリアルタイムの衛星画像を使い社会活動をマーケティング、 モニタリングなどに活かせるサービスの提供を発表しました。飲食店ビジネスの専門家に聞いてみたところ、これは人の流れや街の開発の変化などを捉えられることから出店計画にも活かせるとのことでした。また不動産価格は年に一回しか公表されない公示地価などが基準になることが多いのですが、衛星画像により人や街並みの変化を把握できれば都市開発計画や担保価格の算定を動態的に行うことができるだろう。不動産事業の様に将来のマーケットやキャッシュフローを拠り所にするファイナンスの場合は過去の一時点のデータではなく、直近の見える化されたデータは新たなリスクテイクを可能にすると思います。
プロジェクトへの投資やプロジェクトファイナンスの世界では現地実査が不可欠です。プロジェクトサイトのデューデリジェンスから始まりその後のプロジェクトのモニタリングなどで現地に出向いて実査をします。また今後は環境へのインパクトや環境のプロジェクトへのインパクトもより緻密に見ていく必要が出てくると思います。その中でもESG1の実効性や新興国などのリモートな地域のリアルタイムの状況を分析するためにも今後有効なツールとなることが考えられます。当然、全てが画像分析に置き換わるということはないともいますがリアルとリモート画像のハイブリッド型のアプローチは可能かもしれません。また、船舶などの動産についても画像で確認することができます(船舶の位置情報自体は昔からブルームバーグで見ることはできていましたが目視はできませんでした)。スエズ運河に座礁している船の衛星画像もすぐに入手ができますが、こういった世界の貿易航路やエネルギー供給に多大なインパクト与えるこのような事態もモニタリングできます(記事)。
先進的な使い方で少し驚いたのが、リモートな地域への貧困者への支援のやり方です。西アフリカのトーゴではコロナ禍の状況で現地入りも難しい状況で貧困者に対して携帯を通じて給付金を支給したのですが、その過程で衛星写真が使われています。具体的にはインフラや家などの地域の特徴などから貧困地域を割り出せる画像解析のアルゴリズムを作り、衛星写真を使用して貧困地域の住民に給付金を携帯電話で支給し、電話調査などと併せて実施しています(記事)。食の分野でも農業や漁業で衛星写真が使われ始めていて、生産性の向上が図られています。
衛星画像によりリアルタイムデータが見える化されることで、時間的・地域的にリモートな事象(将来の事業キャッシュフローリスクやコロナやラストマイル問題)についても分析が可能になり事業投資やファイナンスや支援のあり方も変わってくると感じています。
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