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色々ありまして、久しぶりの投稿になります。
徳成さんの記事を読んでメタバースについて考えてみました。
歴史を振り返るとリアルの実社会が発展を成し遂げた理由はイノベーションを通じた産業の進化であり、それを支える制度には個人や私企業に対して「著作権」などの所有に関する権利が保障されていました(逆に私的所有権が保障されていない中央集権的な社会は進歩しにくかったといえると思います)。また、サービスや商品の供給を可能とするテクノロジーが存在し、消費を支えるマーケットがありました。
メタバースの成否も実社会の歴史にヒントがある様に思えます。Off-topicというSpotifyをやっていらっしゃる宮武さんなども所有権をメタバースの重要な概念として挙げていますが、NTFは著作権の様に法律ではなくブロックチェーンによりデジタル社会に所有という概念をもたらしました。また、通信速度やビジュアルやセンサーなどの最近のテクノロジーの進化は個人消費者によるマーケットを作り出し、クリエイター、アーティスト、私企業などは様々な商品やサービスを提供できる様になりました。フォートナイトではコンサートや映画上映があり、Robloxではアパレルブランドなどが活動しています。需要と供給が存在しています。仮想通貨もメタバースを経済圏として確立させるために役立つでしょう。
この様に人類の歴史と比較してみてもメタバースにはブロックチェーンや個人の参加どの「分散化」された制度に基づいていて「社会」として今後も発展していける条件が整っていると考えています。ただし単なる私企業が運営するプラットフォームというものから脱却をするためには個人のデジタルIDが不可欠であると考えています。
メタバースは容姿も性別も経済状況も変えられ、実社会とのリンクもされれば、いわゆる「〇〇ガチャ」などの「リセットボタン」として機能することも考えられます。つまり貧困の解消にも役に立たないか考えています。
銀行業務のうち、ファイナンスと呼ばれる与信行為とは大きく以下の3つの種類があると思います。また、これらの要素が同時にはいっている業務もあります。
1、契約や資産・商品のマネタイズ
2、将来の事業キャッシュフローをマネタイズ
3、資金の出入りの時間差を埋める
ファイナンスはモノの移動や時間の短縮を実現することができるツールとも言える。
例えば、貿易金融は、自社が生産した商品の輸出代金を先方が支払う前に銀行から払ってもらう仕組みであり、その場合はインボイスに基づき、商品を担保として資金を前倒しで受け取れることになります(1と3の要素)。
LBO(Leveraged Buyout)では買収対象企業が将来産み出すキャッシュフローを担保として買収資金を借りるやり方(主に2該当)であり、 プロジェクトファイナンスでは生産したモノの売買契約やリース契約を何もない時点でマネタイズすることができます(主に2)。
また、事業の運転資金は主に仕入れと販売代金の入金のタイミングが異なることから資金が必要となり、個人向けのカードローンや消費者金融や住宅ローンは支出と給料日の入金の時差があるが故に発生する必要資金です(主に3)。
最近の銀行不要論を始めとする議論ではATMの不要論や決済系アプリの利便性ばかりが注目されていますが、それは決済機能や送金に限定していることが多いとの印象です。
上記の業務(特に1と2に関する業務)はリスクをとる上で専門的な知識やノウハウが求められる業務であることから、決済業務運営会社などに代替される可能性が低い業務も多いです。
ファイナンスという与信行為の大半は資金を調達する必要あり、その為にも預金顧客にとって銀行の決済や送金の使い易さは大事だと思います。ただ、だからといって銀行自体が不要になるというのは議論の飛躍があると思います。仮に銀行が口座を使われず、送金を担わなくなったとしても、専門的なノウハウに基づいたリスクをとる与信行為は無くならならずそれに対する対価は支払われるからです。
上記で述べた貿易金融やプロジェクトファイナンスや消費者金融では最近様々な変化があります。
貿易金融のデメリットは書類が多く事務が煩雑なことです。僕も輸出手形の買取などの業務に携わっていましたが本当に面倒でした。最近では書類の電子化だけではなく、ブロックチェーンと使った貿易信用状の管理などの取り組みも増えてきています(記事1)。これにより管理業務が効率化され貿易金融業務に多い不整合やミスも少なり採算性の向上が期待できます。また、昨今のESGで求められているサプライチェーンの管理も容易になると思います。
消費者金融やマイクロファイナンスの分野ではAIや機械学習の活用が容易になり審査の精度も上がってきていますし、これまで融資が難しかった途上国の個人などにもファイナンスが行われています。例えばアフリカの農村などでは携帯や電気料金などの支払い状況の実績などのデータを基に小口融資が行われています。更にこのような各自の支払い実績などを個人が分散型IDで管理できる様になればより個人が融資が受けやすくなると考えられているので、そういう分野でも様々な試みが進んでいます。この分野については伝統的な銀行ではなくそれ以外の業者もより容易に参入できる分野かもしれません。
プロジェクトファイナンスやストラクチャードファイナンスと呼ばれる大型のプロジェクトをファイナンスする業務における最近のトレンドについては、資金の使途を環境保全や改善に限定するグリーンファイナンスの分野への注力が顕著です。例えば、国際再生エネルギー機関によると昨年の建設された発電所の8割以上が再生可能エネルギーでありこの分野でのファイナンスも増えています。日本でも洋上風力発電の分野が注目を浴びています。
また、近年はプロジェクトファイナンス案件の組成とファンディング(資金調達)の分業がみられ、投資銀行は主に案件を見つけて組成することに専念し、それをセカンダリーマーケットで年金基金などの機関投資家に売却するという動きが顕著になってきています。こういう動きは、銀行が益々専門性のある分野へ特化していくことが求められている一つの例だと思います。
リスクテイクについての最先端の手法や業務の選択と集中が金融を進化させ、より効率的に不可能な事業を可能にしたり、その結果、時空を超えて人々の暮らしをより良いものにすることができると感じています。
銀行不要論については、銀行が不要だとか銀行員が不要という表面的な議論ではなく業務を一つ一つ見てその将来性や必要性を判断する必要があると思います。
ベーシックインカムは、貧困対策の一環としてこれまで何度も実験が行われてきましたが最近は総じて良好な結果が得られています。
古くは、ニクソン大統領が米国で1970年代に導入を試みるも失敗した経緯がありますが、その後は住居を無償提供をしてホームレスの減少と財務負担の減少を成し遂げた好事例につながっています。最近の米国で実施された毎月5百ドルを2年間支給する実験では、対象者のフルタイム労働の割合が大幅に増加した一方でタバコや酒類の購入に使われた割合は1%未満という結果も得られています (記事1)
ベーシックインカムはフィンランドなどでも試されていますが、対象者は気持ちが前向きになり社会参加する様になったとの結果が出ていますし(記事2)、ケニアなどでの実験でもベーシックインカムが労働意欲を下げたり浪費を促すことにはつながらず、餓えや病人が減少してメンタル面も改善したとの結果が得られています。それ以外にも様々な国でベーシックインカムの効果が報告されていますが生活水準とメンタル面の改善をもたらし、浪費や怠惰にはつながっていないとするものが大半です。
よってベーシックインカムを推奨する実験結果は出てきているのですが、次に問題となるのは財源です。実験の段階では限られた人々が対象ですが、国民全体に広げると財源が問題となってきます。財源を考える際に注意する必要があるのがベーシックインカムに必要な費用が純増となるわけではない点です。ブレグマン氏などが著書「隷属なき道」でも指摘している通り、ベーシックインカムを導入した場合には生活保護や特定の人のみを対象としている給付金などやホームレスの対策費用やその他の事務関連費用などの福祉関係費用が減少することから、費用削減分も財源となることです。また、ベーシックインカムをきっかけに就労者が増えれば税収も増える筈です。
但し、当然、財源としてはこれだけでは足りないので普通に考えると富裕層に対する課税が考えられるますが、これには抵抗する人も多く政治的に導入は難しい国も多いでしょう。(国際連帯税や金融取引税についても一枚岩ではない状況です)
一方で、新型コロナウイルスの影響などで経済格差の更なる拡大が懸念される中、世界の富豪83人が、各国の政府に対して自分たちのような富裕層に大幅に増税するよう求めるという動きもありました(記事3)。また、ギビングプレッジという亡くなる際に財産の半分を寄付するという運動も一部の富裕層の中で広がっていて、ビルゲイツ、ウォーレンバフェット、ベゾス等が参加を表明しています(記事4)。TwitterのCEOのジャック・ドーシー氏などはベーシックインカムを実現するためにMayors for a Guaranteed Income(MGI)に寄付するなど、ベーシックインカムを目的に寄付をする富裕者層も出てきています。
資本主義は格差を生んだと言われますが、その一方で使い切れない資産を保有し、また社会へのコミットメントも表明している彼らの様な極端な超富裕層も同時に生み出しています。課税という手段で富裕層から幅広く徴税することも考えられる一方で、政治的な難しさがあるのであればこの様な超富裕層の個々人が自主的に決められるギビングプレッジなどの制度の普及を組織立って行うことも大きな財源となるでしょう。
当然ベーシックインカムだけで全てが解決するわけではなく、学校、病院、交通、エネルギーなどのインフラや公共サービスなども必要であり、そういった分野での投資などは引き続き必要となります。ただ、一国の経済の活力の源泉が各人の「やる気」なのであれば、冒頭に書いた様にメンタル面の改善をもたらし将来に希望を持てるようにする力を持つベーシックインカムはその金額以上のリターンをもたらす人への「投資」だと思います。全員が最低限のスタートラインに立てることが重要です。また、その財源としては拡大した格差を何らかの形で逆手に取って社会還元を促すことが考えられるのではないかと思っています。
こういうテーマは全員が同じキャリアや経験をしているわけではないので主観的になってしまうので色々な見解があると思いますが一人の考えとして書いてみました。
金融はどの国でも存在し、国境を跨ぐクロスボーダー案件も多いので僕が経験した国際金融の世界では色々な人と仕事をしているうちにグローバル人材という姿はそれとなく見えてきました。
結論からいうと、僕の中でグローバル人材とは「専門領域で世界で戦える人」だと思っています。「専門領域」というのは特に限定されているわけではなく、特定の技術でもノウハウでも専門性のある領域ということです。例えば、僕の場合はプロジェクトファイナンスという業務に携わっていたのですが、グローバル人材というのはこのプロジェクトファイナンス業務で世界のマーケットで案件獲得して組成できるかどうかだと思います。
それにはいくつかの能力を複合的に発揮することが求められると思います。それは①交渉力やコンセンサスを醸成する力②その分野での国際経験③専門的知識だと思います(この順番で重要だと思います)。まずビジネスの世界だと交渉や合意を取り付けて物事を進めることが第一です(友達をつくったり仲良くなることが第一の目的ではないです)。また経験については、事例を多く知ることは相手を説得したり内部を説得する為にも重要な要素です。経験は最初は少ないかもしれませんが、国内の経験であっても同じ分野であれば経験として使えると思います。最後の専門的知識というのはその分野での当然のルールや決まりなのでこれが無いとゲームに参加できないので意識して習得する必要があると思います。多くの修羅場を潜ることで経験などが身につくと思います。プロジェクトファイナンスの場合だと①銀行としてリスク分析や相手のニーズを踏まえた交渉戦略を立てるここと、②事業者やホスト国関係者などとの交渉の経験、③特定のセクター(例えばLNGや電力)のファイナンスに関するストラクチャーの知識や前例などになります。
これらの条件に「英語」という条件は入っていないですがこれは①~③全てにおいて必要だからです。
こういった金融の分野以外にもグローバル人材が活躍している分野は多くあります。企業内ではメーカーの技術者、マーケッター、内部統制などの部門などでも①~③を発揮されている方々にお会いしたことがあります。
また、僕自身、これまで日本の会社では「グローバル人材の育成」といった人事戦略を良く聞きました。一方で気付いたことは、他国では日本の様に「グローバル人材」という人材層の呼び方をあまり聞いたことがないので、やはり日本の会社などの方がグローバル人材の不足を感じているのかもしれません。
そういう意味では必要とされている「グローバル人材」になれれば活躍の場も自ずと増えるということになるでしょう。今後もこのテーマで自分の例も踏まえながらどうすればグローバル人材になれるのかについて書いていきたいと思います。
今日、Clubhouseでこのテーマをディスカッションするのでこういった考えをぶつけてみて面白い話がでたら追加でアップデートします!
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